コミュニケーション能力

自覚ないの?仕事に対する自己評価の高い人が他者評価と乖離が生じる理由と対応方法

1. はじめに

仕事において、皆さんは、ご自身の評価がご自身以外の他者評価と一致していると自信をもって答えられる方はどれくらいいるのでしょうか。現実的には、仕事に対するご自身と他者の評価は、皆さん自身が思っている以上に大きな乖離がある場合が多いのです。しかも皆さん自身の自己評価よりも、他者評価の方が低いのです。そして、多くの人はそのことに気付いていないのです。

本記事では、仕事に対するご自身と他者評価が異なる理由について示した上で、ご自身と他者の評価の乖離を小さくするための具体的な対応方法について解説していきたいと思います。

自己評価と他者評価の関係性は、以下に示すように2種類がありますが、本記事では「自己評価が高く、他者評価が低い方(①)」に着目して解説します。

  1. 自己評価が高く、他者評価が低い
  2. 自己評価が低く、他者評価が高い

実際には、「自己評価が低く、他者評価が高い人(②)」ももちろんいます、このような方の特徴としては、能力がある方で自分に厳しい方であったり、自己肯定感が低い方であったりと、さまざまなことが想定されます。②については、もちろん重要なことではありますが、論点がずれたり、議論が発散してしまうため、別の記事で解説することとします。

2. 仕事に対する自身と他者の評価が異なる客観的な状況

(1)自身のことを撮影した動画を見たことはありますか?

ご自身と他者の評価に乖離があることを把握する上で、最も効果的なことは、ご自身のことを撮影して動画などで見ることです。それは、仕事でもスポーツでも構いません。

仕事では、例えばご自身の説明やプレゼンの場で動画を撮影してみましょう。ご自身の中では100点満点の出来であったとして、その動画を振り返ってみると、あまりに拙くて恥ずかしくなってしまいます。やたらと「えー」「あのー」と不要な用語を発しながら、意味が伝わらないような説明やプレゼンをしていることに気付きます。

その他、スポーツの例では、スキーやスノーボードで、ご自身の中ではものすごいスピードで滑走していたり、パークでジャンプをしています。それを動画に撮って見てみると、どんなことが分かるのでしょうか。ご自身で思っていた以上にスピードは遅く、思っていた以上にジャンプの高さも低いということに気付きます。

皆さんが感じたことがご自身の評価となり、動画で見たものが他者の評価になります。これらは、自己と他者の評価の違いの典型的な例になります。

(2)自己と他者の認識はそもそも見ているものが違う

なぜこのような乖離が生じてしまうのでしょうか。

ご自身の中では、ご自身のことが中心になってしまい、他者がどのように見ているのかという視点が、相当な意識を持っていない限りありません。説明やプレゼンの場面においても同じです。相手がどんなことを求めているのか、どんな時間内に端的にプレゼンして欲しいのかなど、これらの重要なことを考えないことが非常に多いといえると思います。

ご自身の中ではとても必死です。あ~発表しないといけない、準備もどうしてよいのか分からないといっぱいいっぱいの状況です。なので、与えられたのは10分のプレゼンなのに、20分以上も話し続けて静止される人も少なくありません。ご自身の中ではとても緊張しながら、また、楽しく話していても、相手にとってはつまらない時間になっていることも多いのです。

自己と他者で乖離が生じるということは、他者が求めていることを理解していないからです。一所懸命、他者が求めていないことをして、自分自身はできると感じているのです。

3. 自己評価と他者評価に乖離が生じる心理学の観点からの見解

心理学の観点からは、自己評価は他者評価よりも高くなる傾向にあります。既往研究の例を挙げると、学生たちが自分の最終試験の成績を予測する際に、自身がこれまでに取得した最高点数に基づき高い数値を予測します。その一方で、他の学生の成績の予測においては、その学生がこれまでに取得した平均点に基づき平均的な数値を予測する結果が出ています(Williams & Gilovich, 2012)。このことを、心理学用語で「平均点以上効果(Above Average Effect)」と言います。

もう少し、私たちの仕事の現場に近いケースを例をとり、このような質問をします。「あなたと周りの同僚は同じスキルが必要な仕事としています。あなたの仕事の能力はどの程度ですか?」選択肢としては、「1. 平均よりかなり下、2. 平均よりやや下、3. 平均程度、4. 平均よりやや上、5. 平均よりかなり上」の5つがあります。その結果、多くの人が4. か5. を選択することになります。

これが自己評価と他者評価に乖離が生じる心理学的な観点からの見解になり、20%くらいの乖離があるという指摘もあります。

出典:Williams, E. & Gilovich, T. (2012) The better-than-my-average effect: The relative impact of peak and average performances in assessments of the self and others, Journal of Experimental Social Psychology, 48, 556-561.

4. 自己評価が他者評価よりも高い傾向にある人の特徴

特に次のような特徴のある方は、自己評価が他者評価よりも高い傾向にあるので注意が必要です。

(1)プライドが高い人(でも能力は低い)

プライドが高い人は、自分の信念や能力に対して自信を持っており、他者から何かを指摘されても、指摘を受けること自体を許すことができないので、他者の話を聞くことはありません。その際、実際に能力が低い人の場合には、それを隠す必要が生じてきます。能力が低いことを隠しながら、自分自身のプライドやメンツを保たなければならないため、指摘をした他者に対して攻撃的になることもあります。その他、マウンティングを取って優越感を感じたり、自分に甘く他者に厳しい行動をとってしまうことも、このような背景があるためです。

このように、他者の意見を聞かずに、自己の中でプライドの壁を作っていくことで、他者や客観的な視点が失われていき、他者との評価に乖離が生じやすい状況が生まれることになります。

反対に、能力が高くてプライドが高い人は、基本的には完璧主義でストイックな人である場合が多く、他者が思っているよりも自分に厳しいため、自己評価が他者評価よりも高くなる傾向は小さくなります。

(2)自己中心的・正当化することが目的である人

自分の意見や立場をより重要視し、他者の視点や意見を軽視したり、他者に対する注意が相対的に少ない傾向があります。また、失敗や問題が生じた場合には、責任を他者や外部の要因に転嫁しやすい傾向があります。自分を守るために、責任を他者になすりつけることになります。

また、失敗や過ちを犯しても、目的が自身の正当化であるため、人の意見を聞いたり、原因を突き止めたり、今後の改善策を考える思考に乏しいのです。とにかく理由をつけて自分の選択を正当化しなければならないのです。

皆さんの職場の人を思い浮かべてみてください。上記のような発言や行動をされる方がいるのではないでしょうか。もしかしたら、本記事を読んでいる皆さん自身かもしれません。

5. 自身と他者の評価の乖離を小さくするための対応方法

自身と他者の評価の乖離を小さくするための対応方法として、以下の5つについて説明していきます。

  1. 自身がしていることは相手には60%しか伝わらないことを認識する
  2. 顧客や上司が求めるものを相手目線で考えて対応する
  3. 自身のしていることを動画で録画し分析する
  4. 素直に顧客や上司に結果を聞き今後の改善に生かす
  5. 分析したり聞いた結果を受け止め改善策を講じる

(1)自身がしていることは相手には60%しか伝わらないことを認識する

残念ながら、ご自身が思っている、説明したりしたことに対して、相手には60%くらいしか伝わっていないことを認識することが重要です。これは避けられない事実です。

この認識がなければ、おそらく職場でのコミュニケーションはうまくいかないでしょう。よく無駄と言われている毎日の朝礼が何故必要なのでしょうか。それは、一度では60%くらいしか伝わらないし、認識を共有し続けることができる職員は限定されてしまいます。だから、優秀と分類されたり、自主的に主体的に動くことができる以外に人に向けて、継続的に同じことを話し続けて、認識が薄れないようにし続けることが大切となります。

優秀な人にはあまり必要がなく、一般的な人に対して伝わっていないことと認識することが重要です。

(2)顧客や上司が求めるものを相手目線で考えて対応する

これも①に似ているかもしれません。顧客や上司が求めるものがあるとして、多くの人はその対応を自分目線で考えてしまいます。今日は忙しいから顧客の対応はそこそこにしておこうとか、上司が求めるものを作業として捉えてしまいそもそもの目的を理解せずに作業パーソンとして対応してしまったりします。

でも、本当に大事なことは顧客や上司が何を問題視したり課題と捉えて、具体的にどのようなことをどんなスケジュールで解決していきたいのかを考えることです。多くの人は、目的を理解せずに、指示事項として捉えてしまっているので、自分目線で考えてしまい、相手からみたら、不誠実な対応になってしまうのです。

関連記事:相手のこだわりを仕事に活かすには他者を理解するマインドが重要!5つの具体的なアプローチ

(3)自身のしていることを動画で録画し分析する

ご自身のしていることを動画で録画して、見てみることを強くお勧めします。ご自身の認識との乖離にショックを受けるかもしれませんが、改善して成長していくためには、これほど効果的なものはありません。

録画視聴の初心者の方にとっては、これは想像以上のショックを受けると思いますが、少しくらいの失敗なんて、成功へのプロセスでしかありません。是非、録画を見て、ご自身の癖や相手の反応を冷静に分析して、改善していきましょう。

たった一つの失敗で落ち込みふさぎ込む人と、失敗は成功へのプロセスだと思って前向きに取り組んでいく人、5年度に比べたら、その差はすさまじいものになってしまいます。

筆者自身も速記録が入るイベントでプレゼンして、その文字起こしを見たときの衝撃は忘れられません。今では、それ振り返り、毎年毎年改善を繰り返すことでだいぶ良くなってきました。でも、まだまだ改善していきたいと思っています。

(4)素直に顧客や上司に結果を聞き今後の改善に生かす(フィードバック)

ご自身の取り組んだ結果について、素直に顧客や上司に聞くことは重要です。案外、率直に話をしていただけるケースが多いように思います。但し、傲慢な態度ではなく、成長したいと願う一個人として謙虚な姿勢で取り組むことが重要です。謙虚に愚直に努力を続ける人に対しては、多くの方が協力的に接してくれます。

(5)分析したり聞いた結果を受け止め改善策を講じる

上記の結果を踏まえて、具体的に何を改善してみるのか、他者に説明できるくらいの明確な方向性を示すことが重要です。これは順応的管理(PDCA)の根幹になります。

あれもこれも改善すると考えては、何も具体的に行動することはできません。なので、重要なことは、今年改善することと、中長期的に改善することを分けることです。特に今年改善することが何かを、中長期的な目標と関連付けて、絞りこみ明確にして行動することで、皆さん自身の成長を大きく進めることができると考えています。

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