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オーバースペックとは?オーバースペックによる疲弊を防ぎ生産性を向上させるための具体的な方法

1. はじめに

現代の仕事環境では、多くの人々がオーバースペックによる疲弊を経験しています。仕事の過剰な要求などにより、ストレスが蓄積し、モチベーションが低下してしまうことがあります。しかし、そこにある問題は、皆さんが何となく感じているものの、オーバースペックがどのようなものなのかを理解しないまま、日々を過ごしています。

本記事では、仕事やサービスにおけるオーバースペックについて示し、それを理解した上でオーバースペックにならずに生産性を上げるための方法について解説します。

2. オーバースペックとは?

オーバースペックについて、文字を分解してみます。オーバー(Over:超過)+スペック(Spec=Specificationの略:仕様)であり、「超過した仕様」となります。Oxford現代英英辞典で調べても、Over specificationというものは出てこないので、英語としては限定的な使い方になるかもしれません(インターネット検索するとで部の英語表現として使われているようです)。このオーバースペックについて、製品やサービスの観点からもう少し具体的に解説します。

一般的には、特定の製品やサービスが、顧客が必要とする以上に詳細であったり、必要以上の機能がついていたり、必要以上のサービスを提供することなどを指しています。それによって不要な複雑さやコストが発生することになります。

製品やサービスを購入する側の立場で見てみると、製品で大きなものとしては、自動車や洗濯機、テレビなどでしょうか。自動車であれば軽自動車よりもSUVや外国車を好み購入した結果、ガソリン代が高価であったり、日本で左ハンドルが不便であったり維持費(車検、保険、修理費等)が非常に高いことに気づいたりします。洗濯機であれば、全自動洗濯乾燥機を購入して使用してみたら、電気代がかさみ、乾燥しわがしっかりと落とせないことに気づきます。テレビは、大型化が進み価格競争が進むので、少しでも大型のテレビを購入したら、その大きさは必要なかったことに気づきます。本当に必要なもの(機能)以上のものを購入してしまう状態になります。

製品やサービスを提供する職員(労働者)の視点から考えてみます。自動車は、少しでも多くの機能を付けて、他社との価格や品質の競合で勝つ必要があると考えて、機能の向上をはかるために人材とコストを投入して高付加価値の機能を開発していきます。

規模が小さい製品を例にとっても同じであり、例えば、スマートフォンの画素数が500万画素から700万画素に向上する、果物や野菜の形や大きさが同じになるような品質改良等によるものも同じです。その他、コンビニやスーパーで購入できるような、どこからでも切れる醤油やドレッシング等の小パック、どこからでも切れるお弁当のふたと本体をつなぐテープ、回すだけで空く液体容器のキャップなどなども同じだと感じるのは筆者だけでしょうか。海外ではそのような製品やサービスは全くといってよいほどありませんが、不便だと不平不満を言ったり嘆いている人もほとんどいないのです。

3. 仕事でオーバースペックによる疲弊が生じる理由

オーバースペックにより多くの人が疲弊してしまう理由はさまざまですが、主な理由を以下にまとめてみます。

(1)要求の増加

仕事には常に新しいプロジェクトやタスクが増えていく傾向があります。人材が限られた中で仕事が増えていくので、その要求に応えようとすると、自然とひとりひとりの負担が増えていきます。これは、企業の競争力(付加価値)向上でもありますが、職員の残業時間が増える要因にもなります。

関連記事:仕事で残業が多い人は忙しい?残業時間を減らす逆転の発想により生産性が向上する理由と4つの行動

顧客が必要な要求や基準を満たした後も、永遠に機能の向上に向けて開発していきます。売上のシェアが落ちれば職員には更なるプレッシャーがかかり、残業時間もますます増えていき、そして疲弊してしまいます。

(2)完璧主義への傾倒

特に昔に苦しい思いをして猛烈に残業してきた経験があり、かつて仕事ができたといわれる上司にありがちですが、このような上司は、完璧な成果を求める傾向があります。完璧を目指すあまりに時間をかけ過ぎたり、細部にこだわり過ぎたりするのです。自分自身の中だけでとどめてくれるのであればよいのですが、この要求を部下に対して求めてくると問題がおきてきます。

部下は、その要求に対してもちろんがんばって取り組む人が多いのですが、残業時間や要求が増え続けるにつれて、だんだんとその要求に取り組む意味や本来の目的が分からなくなってきます。そして目標を見失い、疲弊してしまいます。

かつて猛烈に仕事をしてきた上司は、そのやり方が正しいと信じています。でも実際には、過去と現在では取り巻く状況は激変しており、同じやり方はほぼ通用しません。筆者自身が過去を振り返っても、相当に非効率でムダな作業をさせられていたと思うことが多々あります。まさにオーバースペックとなる作業を延々とするということです。

でも、その失敗を繰り返すことで、上司が反面教師となり、ムダな作業をしないため、昔話しかできない上司にならないためにどうすればよいのかを真剣に考えて実践していくことで、多くのことを学ぶことができたのも事実です。なので、意識をしっかりと持っておくことが大切かもしれません。ただし、ムダはムダであり、排除すべきものであることに変わりはありません。

(3)イノベーションが起こしにくい構造

少し大きな視点から理由を考えてみます。日本は、イノベーションが起こしにくい構造になっているので、オーバースペックに陥っていると考えることができます。

企業や業種にイノベーションが定期的に起きれば、商品がオーバースペックになることはありません。その一方で、イノベーションが起こせないと、既存の商品や技術に依存して経営をしていくことになります。

イノベーションは、実際には、全く新しいものを創造するということはほとんどなく、既存の商品や技術に、新しい視点を掛け合わせることで、できているのです。

しかし、日本はそれが苦手なので、「少しだけ改善」という手法に走りがちです。その具体例が、封の開けやすさであり、画素数の増加であり、野菜や果物を同じ大きさで作るなのです。改善自体が問題なのではありません。顧客のニーズに対してどれだけ合致して満足度を高めて、付加価値を上げることができているのかが重要になります。顧客の視点で見ると、製品やサービスの付加価値が分かるのではないでしょうか。

なぜ、イノベーションが起きにくく「少しだけ改善」に走ってしまうのでしょうか。いくつか例を挙げてみますが、枚挙にいとまがありません。

  1. 日本企業は解雇がしにくい(雇用の流動性がない)
  2. 日本がベンチャー企業や起業に対して厳しい環境にある(優遇されていないし敵視さえされる)
  3. 世界の動向の無知により日本特有のガラパゴス化が生じている
  4. 年功序列からの本質的な脱却が図れないので能力が低くても企業に依存し上司でいつづけられる
  5. 能力の低い上司の下で働かなければならない(能力が評価されない)

「少しだけの改善」の蓄積の結果、日本はオーバースペックで、無駄が多く非効率で付加価値の低い国となってしまっているのです。もちろん、世界と戦っている多くの企業があることも事実であり、そのすばらしい面を否定しているものではありませんので誤解なきようお願いします。

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4. オーバースペックによる疲弊を防ぎ生産性を向上させるための具体的な方法

(1)パレートの法則の活用

パレートの法則という考え方は、仕事において非常に重要です。この法則は「結果の80%は上位20%の要因で決まる」というものです。具体的には、成果や利益の80%は、全体の20%の重要な要素や活動から生まれるとされています。以下に、パレートの法則を活用して、生産性を向上させ、オーバースペックによる疲弊を避ける方法を解説していきます。

重要なタスクの特定

パレートの法則に基づくと、仕事の成果の大部分は全体の一部のタスクから生み出されます。まずは、自分の仕事の中で最も重要なタスクを特定しましょう。これには、目標や優先度を考慮することが重要です。優先度の高いタスクに集中し、効果的に取り組むことで、成果を最大化することができます。

二八の法則の適用

パレートの法則は、一部のタスクが全体の成果の大部分を占めることを示しています。これを念頭に置き、自分の仕事においても二八の法則を適用してみましょう。具体的には、自分のタスクやプロジェクトのうち、重要な20%の要素を特定し、それに集中的に取り組みます。これにより、効率的に成果を上げることができます。

優先順位の設定

オーバースペックによる疲弊を避けるためには、優先順位を設定することが重要です。重要なタスクに優先的に取り組み、時間を割り当てることで、成果を最大化できます。また、時間管理にも注意を払いましょう。締め切りに追われることなく、効果的なスケジュールを立てることで、ストレスを軽減できます。

デリゲーションとアウトソーシング

パレートの法則を活用する際には、すべてのタスクを自分でこなす必要はありません。デリゲーションやアウトソーシングを活用し、他の人に任せるべきタスクを明確にしましょう。自分が得意な分野や重要なタスクに集中することで、生産性を高め、疲弊を回避することができます。

効果的な休息とリラックス

オーバースペックによる疲弊を避けるためには、効果的な休息とリラックスも重要です。働きすぎやストレスの蓄積は、パフォーマンスを低下させます。定期的に休息を取り、リラックスすることで、心身の疲労を癒し、ストレスを軽減できます。自分に合ったリラックス方法を見つけ、積極的に取り入れましょう。例えば、ヨガや瞑想、散歩などの運動、趣味に没頭するなど、自分自身をリフレッシュさせる時間を作ることが大切です。

(2)オーバースペックでなくハイスペックの価値を目指す

ハイスペックとオーバースペックの違いを理解し、ハイスペックの価値を目指すことが重要です。詳細については以下の記事を参考にしてください。

関連記事:ハイスペックとオーバースペックの違いを理解する!仕事で生産性を向上させる重要な考え方と具体的な取り組み

5. まとめ

仕事でオーバースペックによる疲弊を防ぐためには、パレートの法則を活用することが有効です。重要なタスクに集中し、優先順位を設定し、効果的な時間管理を行いましょう。また、デリゲーションやアウトソーシングを活用し、自分に必要なタスクに絞ることも重要です。さらに、効果的な休息とリラックスを取り入れて、心身の疲労やストレスを解消しましょう。また、オーバースペックではなく、ハイスペックの価値を目指すことを意識していくことが重要です。これらのアプローチを取ることで、前向きな姿勢を保ちながら、より充実した仕事を行うことができます。

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