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仕事で残業が多い人は忙しい?残業時間を減らす逆転の発想により生産性が向上する理由と4つの行動

はじめに

皆さんは、年間を通じて残業時間は多いですか?それとも、少ないですか?こんなことを聞くと、業種によって大きく異なりますが、サービス業などで残業を多くしている人は、「仕事量が多すぎて残業しないと終わらない」とか「早く帰りたいのに上司が帰らないから帰れない」とか「残業しない人の残務を引き受けているから残業時間が増える」とか「会社の仕組みが非効率だから残業時間が増える」とか「残業しないと給料が安すぎる」とか、いろいろな意見が出てきそうです。中には、「新しいことを学んで成長する時だから今は時間をかけて残業をしてでも取り組むことが重要だ」という前向きな意見の人もいるかと思います。

働きがい研究所 by openworksの調査結果によると、月当たりの平均残業時間は「30~40時間」が14.5%、「40~50時間」が13.7%、「50時間以上」はなんと43.7%もいるという驚愕の結果となっています。厚生労働省が、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から施行して定める時間外労働の上限規制は「原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別な事業がなければこれを超えることはできません」と定めています。更に「臨時的な特別の事業があっても労使が合意する場合でも、年720時間以内、複数月平均80時間以内(2か月平均、3か月平均、4か月平均、5か月平均、6か月平均の全て)、月100時間未満(休日労働を含む)を超えることはできません」と定めています。厚生労働省がこのように法改正をして定めなければならない背景を考えると、働きがい研究所の結果は腑に落ちるのかもしれません。

仕事で社会や会社に貢献するためには「とにかく時間をかけて取り組み、より良い成果を出すことが重要!」「残業するのは当たり前!」このような考え方が、皆さんが働いている職場で残っていませんか?今は変わりつつある過渡期にあるのかもしれませんが、依然としてこの残業正論文化が残っている職場も多いのではないかと思います。

一方で、残業時間を減らすとなると、生産性が下がるということもリーダーの立場にいる方は心配になるかと思います。それでは、私たちは残業時間を減らすためにどのように考えて行動していくことができるのでしょうか。本記事では、京都にある人気店「佰食屋」の経営者である中村朱美さんの「売上を減らそう(ライツ社)」に記される内容などを参考につつ、ビジネスで制約を設けて取り組むことが効果的である理由や考え方、具体的に取り組むことができる行動などについて筆者の考え方も交えて解説していきたいと思います。本記事は、書籍を解説するという趣旨のものではありませんのでその点はご注意ください。筆者は飲食店の従事者ではなく、残業時間が多いと言われるサービス業に従事していますが、この書籍には、飲食店に限らず、多くの業種で参考になる要素が凝縮されており、更に読みやすい内容なので多くの方におすすめできます。是非、読んでみて考えていただきたいと思えるような、「超」がつくほどの良書だと筆者は考えています。そんなこと自分にはできない!と思う方もいるかもしれませんが、ビジネスにおける本質的な部分を見事についていて、行動し、ものすごい成果を上げています。筆者はお恥ずかしいことに、お店に行ったことがありません。。。なので、近いうちに絶対に足を運んで会社から大切にされている従業員の方と接し、最高のコスパの最高の料理と温かいサービスを満喫して楽しんだり学んだりしたいと思っています。

結論

  • 残業時間が多い場合のメリット・デメリット:メリット・デメリットは相反しています。でも実際にはそういうものであり、メリット・デメリットを理解した上で、どのようにバランスを図り、生産性を最適化していくことができるのか、どのように行動していくのかが重要です。このことを理解した上で、今からできる以下の行動をしていくことが重要です。
  • 行動1:制約条件を定めて早く帰宅しましょう。仕事の流れも考えながら1週間の毎日の残業時間の予定を決めて強制的な制約条件としてみましょう。あとは、その制約条件の下でとにかくその通り行動してみるということが重要です。残業時間の多い方は、最初は無理のない時間設定をしましょう。
  • 行動2:仕事の目的や成果に対して本当に必要なことを絞り込みましょう(優先順位の設定)。求められる仕事の目的や成果に対して、対応すべき必要な事項や成果を決定づける重要な要素について整理し、優先順位をつけましょう。パレートの法則があり、結果の80%は上位20%の要因で決まるため、上位20%の要因を定めて集中的に対応することで生産性が高まります。
  • 行動3:適材適所の配置により職員のパフォーマンスを最大化・最適化しましょう。組織やチームのリーダーである場合は、働きやすい職員の組み合わせを模索し、構成を改善し続けていきましょう。部署やチームに所属する職員であれば、個別には、プロジェクトを遂行する上で、必要な情報を得るため、各専門性に対していつでも質問して話を聞いていただける職員を定めることが重要であり、どの専門性に対してどの職員に聞くのか、アロケーションを作りましょう。
  • 行動4:顧客ニーズをくみ取った小さな改善を繰り返しましょう。顧客に話を伺う機会があるときに、そのアンテナを高く張り巡らし、顧客の意見を取りこぼさないようにしましょう、また、顧客の目線から、自身のサービスを振り返る機会を設けるようにしましょう。

解説

残業時間が多い場合のメリット・デメリット

もし、皆さんが20代後半~30代前半の一人暮らしで職場からの距離も近く、働こうと思えばいくらでも働けるという状況下にいたら、多くの時間を残業に費やしますか?仕事に一定のやりがいをもっていれば、少なくとも費やすことができる環境であれば、長く残業してしまうのではないでしょうか。あと1~2時間くらい残って、この仕事を片付けようとか考えると思います。筆者も以前はそうでしたし、実際にものすごい残業をして多くのことを覚えて成果を上げてきました。ある仕事を覚える一時期で制約条件が少ない場合は、残業時間を気にせず集中して仕事に取り組むことは悪いことではないかもしれませんし、それは否定していません。ただ、これにはメリットとデメリットがあることを認識することが重要です。

残業時間が多い場合のメリット

メリット1:「短期的」なメリットは確かにあります。先に記したように、残業時間を気にせず集中して仕事に取り組むことで、多くのことを覚えて成果を上げることができます。それはそうですよね、残業をしない人と、毎日2時間(月40時間程度)の残業をする人を比べた時に、普通は残業した人の方が成果が出てきても不思議はありません。ただ、それがある程度マニュアル化された仕事で、かけた時間と成果が比例する性質の仕事ならという前提条件がつきますが。

メリット2:時間をかけて成果をチェックできたり改善できるので、成果の品質を上げたり、ミスを減らすことができます。これによって顧客満足度を高めることができ、顧客からの信頼が高まると考えられます。また、顧客から急な依頼があったときにも、残業して迅速に対応することでも信頼は高まるでしょう。

メリット3:創造性が高く複雑な課題を解決するような仕事の場合でも、短期的なメリットはあります。時間内に1つのプロジェクトに関わる人と、残業時間も含めて2つプロジェクトに関わる人では、単純に成果に対して2倍の差がつきます。ただし、時間的には残業時間2時間では済まないような、かなり多くの残業時間を費やす必要があります。一方で、経験値や知識としては、異なる2つのプロジェクトに取り組んだとした場合はどうでしょうか。一般的な会社の入社3~5年くらいまでは2倍くらいの効果があるでしょう。

残業時間が多い場合のデメリット

デメリット1:何よりも失うものは時間です。1日24時間というのは、世界中の誰にとっても平等であり、時間が戻ったり長くなることはありません。大事なことは、時間の使い方です。残業時間が多い場合は、物理的に仕事以外に使うことができる時間が減るということです。全て会社が優先、家族や友人と過ごせる時間や趣味や娯楽に使える時間も無くなります。社畜という言葉が出てきたように度が行き過ぎると、「家族や友人と過ごす時間は生産性が低下するから非効率だ!」なんて考える人も実際におり、人生とはいったい何なのかという根幹を揺るがす事態にもなりかねません。

デメリット2:成果の品質が下がり、ミスが増えます。これまで本稿を読んでいただいた方は「?」と思いませんでしたか?仕事に多くの時間が取れるので、成果の品質や細かなミスをチェックできる時間が増えるから成果の品質が上がり、ミスが減るはずではないでしょうか。残業時間が多い人は、人生が仕事を中心に回っており、そうなると仕事をしていない時間も脳がリセットされません。仕事に対して主観的な状況が継続し、他の視点から俯瞰して自身の仕事を見るということができなくなります。その状況下では、バイアスが働き、ちょっとした顧客の反応の変化や成果の間違いにも気づくことができなくなります。恐らくこのような方は、他の職員や上司に成果について相談する機会も減ってきているのではないでしょうか。

デメリット3:経験値や知識が増えない。これも「?」ですね。メリットの方では、入社3~5年くらいまでは2倍くらいの効果があると述べました。しかし、それ以上経過すると2倍になる訳ではありません。同じ部署にいて、2つのプロジェクトに関わると、共通のプロセスやツールを使う場合も多いです。業種や部署の異動の頻度にもよりますが、筆者個人の経験を踏まえても、ある程度の経験があれば、会社内で違う部署に所属しても、2倍の時間をかけても新たに得られる経験値や知識は1.3倍くらいしか増えないということもありえるかと思います。比較的汎用性のあるデータやアプローチで類似したプロジェクトに継続的に取り組んでいると、新しい視点から得られる情報は少なくなります。類似のことを時間をかけて繰り返し取り組んでも経験値や知識はある一定値に漸近していきますが、その上に向かうには、視点を変えていく必要があります。プロフェッショナルとしてあることを極めるという重要な視点がありますが、ここでは性質の違うものとして取り扱わせていただきます。

メリット・デメリットのまとめ

残業時間が多い場合・少ない場合のメリット・デメリットは相反しています。でも実際にはそういうものであり、皆さんも実感できる部分があるのではないでしょうか。ここで重要なことは、メリット・デメリットを理解した上で、どのようにバランスを図り、生産性を最適化していくことができるのか、どのように行動していくのかということになります。

今からできる4つの行動

(1)制約条件を定めて早く帰宅する

具体的にできる行動について解説していきます。まずは、仕事の流れも考えながら1週間の毎日の残業時間の予定を決めて強制的な制約条件としてみましょう。これはご自身で決めればよいので、決めるだけなら簡単です。「毎日残業しない!」という選択ができる方は良いですが、おそらく本稿を読んでいただいている方は残業時間も多く頑張っている方も多いことでしょう。残業時間の多い方は、最初は無理のない時間設定をしてみましょう。あとは、その制約条件の下でとにかくその通り行動してみるということです。

男性・女性などを問わす、例えば子育て(子供の送り迎え)や介護などにより、仕事の勤務時間という観点で制約がある方で本稿を読んでいただいている方は、時間が制約されている中で、仕事も生活もバランスを取りたいという方が多いのではないかと思います。そのような方は、(2)以降を参考にしていただければ幸いです。

筆者自身も、幸いなことに子供を授かってから(フルタイムの共働きなので)時間に確実な制約ができました。子供は親がいなければ保育園や学校などの送り迎えもできないので時間的な制約は絶対です(ここでは祖父母などの外部サポートは論点から除きます)。仕事上の時間の制約ってこんなに優先順位が低いんだという驚きでもあり、また、やってみれば何とかできていて、これまでの残業ありきの考え方がいかに間違っていたのかに気付かされました。残業ができなくても、子供が寝てから必要最小限の対応をしたり、フォローアップできることも多々あります。今では、それが最重要の前提条件であり、仕事の顧客との大事な打合せが伸びて子供の迎えが間に合わないときに、「このプロジェクトの責任者なのにすみません、子供の保育園の迎えがあるので、ここで帰らせていただきます。あとでフォローアップさせていただきます」と言って帰ったこともあります。もちろん、それが通用しないような重要な仕事に携われている方もいるので、それを否定するつもりは全くありません。しかし、案外、前提条件だと割り切ってしまえば、与えられた条件下でベストを尽くすことで、思っていた以上に何とかなるものでしたし、今のことろはこれで対外的に怒られた経験もありません(対内的な部分は違う要素が入るので少々複雑です)。

よくよく考えてみると、今はコロナ禍という特殊な状況ですが、インフルエンザに感染しても、入院するような状況になっても何日も休んでいます。でも、結局のところ何とかなっていませんか?そうです、私たちが心配している以上に思いのほか何とかなっていますし、多くのケースでは何とかできると考えてもよいのではないかと思います。

きっと、最初のうちは、制約条件を決めても、実態との乖離が出ると思いますが、乖離が生じた要因を分析し、少しずつ改善して取り組みを継続すれば、効果が現れてくると思います。(2)以降では、定めた制約条件と実態(結果)に乖離が生じないように、具体的にどのような行動をすることが大切なのかについて解説していきます。

(2)仕事の目的や成果に対して本当に必要なことを絞り込む(優先順位の設定)

時間の制約条件を決めたら、実際にどのように行動することが大切なのでしょうか。大事なことは、求められる仕事の目的や成果に対して、対応すべき必要な事項や成果を決定づける重要な要素について整理し、優先順位をつけることです。

パレートの法則というものがあります。結果の80%は上位20%の要因で決まるというものであり、上位20%の要因を定めて集中的に対応することで生産性が高まります。100%の結果を求めるためには、下位80%の要因に対処する必要があり、100%を求めると時間はいくらあっても不足し、生産性は向上しません。そのため、80%の成果(結果)を目指して、可能であればそれを量産することが重要になります。顧客満足度を高めるとともに、顧客や社会、会社に多くの成果で貢献できるようになります。

あれも重要これも重要、でもあれは忘れてはいけない、皆さまはこんな職場や部署に努めていませんか?これは、本当に成果を何も生み出しません。だからといって、ばっさばっさと切り捨てて対応していると、上司に怒られてしまうこともあるでしょう。そのため、できるところから少しずつ始めて、継続的に発展していくことをお勧めします。

佰食屋さんの場合は、圧倒的な味を圧倒的なコスパでサービスを提供することで顧客満足度を高めるということを最優先事項として行動しています。その目的に対して、切れるものをばっさばっさと切られています。選択と集中を突き詰めた明確な経営方針です。従業員の方にとっても恐らくとても明確で分かりやすいのではないかと思います。その上で整理券の配布による顧客満足度を高めつつ、フードロスを減らすなどの原価を下げる工夫により利益を確保しています。また、企業や店舗を拡大するために従業員を雇うのではなく、適材適所の人材がいて、初めてその職員を生かすために店舗を作るといったアプローチは、とても重要であると考えています。

人材不足や負担があり解消されない中で、売上を伸ばし、新しいプロジェクトにもチャレンジすることが求められる状況下では、職員のモチベーションを高めて企業が発展することはできません。多くの発展途上の企業がここで失敗していることは歴史を見ても明らかです。

(3)適材適所の配置により職員のパフォーマンスを最大化・最適化する

組織やチームのリーダーである場合は、働きやすい職員の組み合わせを模索し、構成を改善し続けていきましょう。佰食屋さんの場合は、相性や適性を見て適材適所に職員を配置していることが述べられています。また、大変興味深く共感できることとして、採用の際に重視していることが、「採用基準はいまいる従業員と合う人」「どんな人も即戦力」ということです。

この考え方は大賛成です。企業は顧客に対してリピーターとなっていただけるサービスを提供することに集中しなければならなりません。それなのに、なぜ職場内で相性の悪い職員と組み合わせ、そのために、職場内で職員間の不要な摩擦を作り出す必要があるのでしょうか。生産性を高めることを優先すれば、この考え方が機能しないことは明らかです。上司と呼ばれるような世代には、「根性論」を好まれる方が多いのですが、重要なことは、職員が気持ちよく働いて生産性を高めて最適化することです。

部署やチームに所属する職員であれば、個別には、プロジェクトを遂行する上で、必要な情報を得るため、各専門性に対していつでも質問して話を聞いていただける職員を定めることが重要であり、どの専門性に対してどの職員に聞くのか、アロケーションを作りましょう。

ただし、職場には、テイカーと呼ばれる人や職場環境を壊してしまう人がいることも現実にあります。本当は採用しなければよく、または、相性の良いところや影響が及ばないところに異動したり、バスから降りてもらえばすぐに解決するのですが、これは社風にもよるので簡単にはいきません。専門性を考えると、その職員に聞かなければならない状況もあると思いますが、距離を保つことはとても重要ですのでくれぐれも注意して下さい。

(4)顧客ニーズをくみ取った小さな改善を繰り返す

顧客は私たちの何を見て、サービスを受け取ったり、リピーターになってくれるのでしょうか。顧客に話を伺う機会があるときに、「ぼそっ」と一言があったりしますよね。大事なことは、そのアンテナを高く張り巡らし、顧客の意見を取りこぼさないようにすることです。また、顧客の目線から、自身のサービスを振り返る機会を設けるようにしましょう。

佰食屋さんの場合は、100食販売に限定することで、ほかのことを考える余裕が出てきます。些細な変化や違和感に気づけるようになります。その改善が価値のあるアイデアになっています。「傘の取り間違いを防ぐために番号を書いた選択ばさみを傘につけて目印にする」、「店員に声をかけなくても好きなだけお茶を飲めるように、ボトルをさまざまなところに配置したい」「海外からのお客様は味噌汁を飲む際スプーンを使うようなので、最初からスプーンをお出しするのはどうか」などといった具体例が挙げられています。

これは私自身はイノベーションだと思いますし、他の書籍でも同様の主張が見られます。皆さまの職場でも、顧客との関係でこのような改善点はありませんか?この「痒いところに手が届く」サービスや付加価値は、数値には現れにくくても、リピーターになっていただける可能性は高いはずです。

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