コミュニケーション能力

コミュニケーション能力の低い上司が部下を潰す!その特徴と行動分析学との関係

1. はじめに

仕事において、上司と部下の関係は非常に重要です。しかし、中には部下を潰し、士気を下げるような上司も存在します。このような上司の特徴や行動は、部下の働きやすさやストレスレベルに大きな影響を与えます。そこで本記事では、舞田竜宣氏・杉山尚子氏の「行動分析学マネジメント 人と組織を変える方法論」を参考にしながら、部下を潰す上司の特徴と行動分析学との関係、そしてその重要性について解説していきます。部下を持つ上司やマネージャーの方々にとって、部下が生き生きと働く環境を作り出すための貴重な知識が得られることでしょう。

2. 部下を潰す上司の特徴

部下を潰す上司とは、部下が嫌だと思う行動を繰り返し行う傾向があります。彼らは自身の権力や支配欲を満たすために、部下をいじめ、威圧し、無理な要求をすることがあります。以下に、部下を潰す上司の特徴をいくつか挙げてみます。

まず、彼らは部下に対して高い圧力をかけます。業務の達成や成果に対する過度な要求や、時間的な制約を無視した短期的な目標設定が見られることがあります。これにより、部下は常にストレスやプレッシャーにさらされ、モチベーションを失ってしまうことがあります。

また、上司は部下の失敗やミスを強調し、責任を押し付ける傾向があります。彼らは自身の立場を保つために、部下を貶めたり、非難することで自己保身を図ろうとします。これにより部下は自信を失い、働く環境での成長や自己実現を妨げられます。

さらに、上司は部下の意見やアイデアを無視したり、聞く耳を持たないことがあります。彼らは自分の意思や考えを優先し、部下の貢献や創造性を軽視する傾向があります。これにより部下は無力感や不満を抱き、自己表現や主体性を奪われてしまうことがあります。

部下を潰す上司の特徴は多岐にわたりますが、共通して言えることは、彼らが自己中心的な思考や行動パターンを持っているということです。彼らは自身の利益や支配欲を最優先し、部下の成長や幸福を無視してしまう傾向があります。このような上司の存在は、部下のやる気やパフォーマンスに深刻な影響を及ぼすことになります。

3. 行動分析学との関係を理解することの重要性

(1)行動分析学とは

行動分析学は、文字通り行動を分析する科学です。ここでいう「分析」とは、行動の原因を明らかにすることを指します。人や動物が行動する際には、その背後にある原因や要因が存在し、行動分析学はそれを解明し、行動に関する法則やパターンを見つけ出そうとする学問です。

また、広義において「行動」とは、単に手足を動かすことだけでなく、思考、推論、記憶、プランニング、他者への思いやり、感情の経験など、さまざまな活動を含みます。つまり、仕事を怠ることや欠勤することだけでなく、主体的に何かアクションを起こすことを行動と考えるのが行動分析学の視点です。

(2)部下を潰す上司の行動と部下の反応を分析する

①部下が嫌だと思う行動を繰り返すと耐性がつく

いつも叱ってばかりいる上司の説教や叱責、嫌みは、徐々に部下たちに聞き流されるようになります。最初は効果があったかもしれませんが、徐々にその効果は薄れてしまい、上司はより強い行動にエスカレートする傾向があります。この悪循環が続くと、部下を潰すという悪影響を及ぼし、場合によっては虐待につながる可能性もあるのです。

部下が「この人また面倒なことを言っているから無視しよう」「危ないから関わらないようにしよう」となるのは、部下が上司の行動に対して耐性を持つようになった結果です。しかし、これは組織やチームの効果的な機能を阻害し、生産性やモチベーションの低下につながる可能性があります。

だからこそ、行動分析学を理解することが重要です。行動分析学は、上司の行動と部下の反応の関係を科学的に分析することで、良い循環を作り出すための手法です。上司は部下の嫌な行動を繰り返さず、代わりに部下をサポートし、信頼関係を築くようなアプローチを取ることで、部下が生き生きと働ける環境を作り出すことができるのです。

②嫌だと思うことを与える人を避けるようになる

嫌なことを与えるような人のそばには誰も近づきたくありません。上司が部下に嫌なことを続けると、良好な人間関係の構築が困難になります。部下たちは自発的に指導を求める気持ちが起きず、適切な教育や指導を行うことも難しくなります。さらに、嫌なことを与える人に対しては、部下の情動反応が起こり、攻撃的な態度をとる可能性もあります。

このような状況では、上司は孤立し、誰からも話しかけられない存在となってしまいます。部下たちは上司に対して距離を置き、信頼やコミュニケーションの機会が失われていきます。結果として、チームの協力や相互作用が妨げられ、生産性やパフォーマンスが低下する可能性が高まります。

したがって、行動分析学を理解することは非常に重要です。上司は嫌なことを与えるのではなく、部下をサポートし、肯定的なフィードバックや指導を提供することで、信頼関係を築き上げる必要があります。それによって、上司と部下の間に良好なコミュニケーションが生まれ、共同の目標に向かって協力し合える環境が整います。

③行動が全般的に抑制され新しい行動が生み出されにくい

嫌だと思う相手の行動に対して、皆さんが行動を抑制すれば、問題が起きるような行動はなくなります。しかし、その抑制は全般的な行動にも影響を与えます。結果として、新たな学習や成長の機会が制限されてしまいます。

部下は必要最小限のことにしか関わらず、自発性や創造性が奪われた組織が形成されていきます。上司の行動が抑制的であると、部下たちは自己防衛のために自らの行動を制限し、リスクを避ける傾向が強まります。その結果、新しいアイデアや改善の提案が出にくくなり、組織全体の成長やイノベーションが阻害されます。

したがって、行動分析学を理解することは重要です。上司は部下の自主性や創造性を奨励し、安全な環境を提供することで、新しい行動やアイデアが生まれる機会を増やす必要があります。部下たちは自身の力を発揮し、組織全体の活性化に寄与することができるでしょう。

④一時的な効果しかない

嫌なことを与えることで部下の行動は一時的に変わるかもしれませんが、長期的に見れば何の解決にもなりません。上司が部下を潰す行動を繰り返すと、部下の士気は低下し、働く意欲も減退します。部下たちは、嫌な上司に対処するために仕事をこなすかもしれませんが、その過程で組織への献身や自己成長意欲は失われてしまいます。

一時的な効果しか得られないため、部下たちは上司がいなくなった瞬間に、仕事への関心を失い、モチベーションが低下します。組織内の協力や生産性が減少し、チームのパフォーマンスにも悪影響を及ぼす可能性があります。

そのため、上司は行動分析学を理解し、部下を潰すような一時的な手法ではなく、持続的なモチベーションやエンゲージメントを促すリーダーシップを発揮する必要があります。信頼関係を築き、部下の成長をサポートすることで、生き生きと働ける環境を整えることが重要です。

⑤それでも上司は部下に嫌なことをしつづける

上司は孤立しており、誰も主体的に積極的に協力してくれないのですが、それにも関わらず、部下が嫌だと思うことをし続けてしまいます。これは、上司が「嫌なことをする」という行動に対して強化が働いているためです。部下が嫌な反応を示すことで、上司は自身の権限や支配力を維持しようとしています。

このような状況では、上司にとって他の方法を取る選択肢が制限されています。他の方法を取ることは、上司が間違いを認めることを意味し、自己防衛反応が働くためにできないのです。

しかし、行動分析学を理解することで、この問題を解決する可能性があります。行動分析学は、行動とその結果の関係を明らかにし、望ましい行動パターンの形成に向けてのアプローチを提供します。上司が部下に対して持続的な嫌な行動を続けることでなんら解決策は生まれません。上司自身が自身の行動を見つめ直し、部下との信頼関係や良好なコミュニケーションを築くことが必要です。

4. 部下が生き生きして働くことができるような上司になるためには

行動分析学からのテクニックはあり、それについてはまた別の機会で解説することにします。本記事では、上司の行動により部下がどのような反応をしているのか、その原因について行動分析学の観点から解説しました。

ここでは、部下が生き生きして働くことができるような上司になるための方法として、人に好かれるための6つの原則を紹介しておきます。これらの原則は、デール・カーネギー氏の「人を動かす 文庫版(創元社)」に基づくものであり、関連記事も掲載しておきますので興味のある方はこちらも見ていただければ嬉しいです。

  1. 相手に誠実な関心を寄せる
  2. 相手への笑顔を忘れない
  3. 相手の名前を覚える
  4. 相手の聞き手にまわる
  5. 相手の関心のありかを見抜く
  6. 相手を心からほめる

これらの原則を実践することで、上司としての人間関係を構築し、部下が生き生きと働く環境を作り出すことができます。部下が尊重され、成長を支援されることで、組織全体のパフォーマンスも向上するでしょう。関連記事では、それぞれの原則について詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

5. まとめ

部下を潰す上司の特徴と行動分析学との関係について考えてきました。部下を潰す上司は、部下が嫌だと思う行動を繰り返し、一時的な効果しかもたらさないことが特徴です。しかし、行動分析学の観点から見ると、このような上司の行動は耐性の形成や新しい行動の抑制を引き起こし、部下の士気を低下させます。

上司が部下を生き生きと働かせるためには、人に好かれるための原則を実践する必要があります。相手に誠実な関心を寄せ、笑顔を忘れずに接し、相手の名前を覚えたり、関心のあることを見抜いたりすることが重要です。さらに、相手をほめることで部下のモチベーションを高めることも大切です。

部下が生き生きと働ける環境を作るためには、上司自身が変わる必要があります。行動分析学の観点と人に好かれる原則を組み合わせて、上司と部下の関係を改善しましょう。部下の成長を支援し、組織のパフォーマンスを向上させることができるはずです。

6. おすすめ書籍「行動分析学マネジメント 人と組織を変える方法論(日本経済新聞出版社)」

本記事で取り上げた部下を潰す上司の特徴と行動分析学の関係を深く理解し、部下との良好な関係を築くためには、さらなる知識や手法が必要です。そのためにおすすめしたいのが、「行動分析学マネジメント 人と組織を変える方法論」です。

この書籍では、行動分析学の原理とその応用を通じて、組織内でのマネジメントや人間関係の改善に役立つ具体的な手法が紹介されています。部下を潰す上司の問題に取り組む上で、自己分析や部下の行動分析、適切なフィードバックの方法など、実践的なアプローチを学ぶことができます。

この書籍は、日本経済新聞出版社から出版されており、豊富な事例や実践的なケーススタディが掲載されています。部下との関係改善やリーダーシップの向上に興味のある方にとって、貴重な知識となることでしょう。

部下を潰す上司の問題を解決し、組織内でより良い環境を築くために、ぜひ「行動分析学マネジメント 人と組織を変える方法論」を読んでみてください。あなたのマネジメントスキルの向上と組織の成果の向上につながるでしょう。

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